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題名:Enfortumab Vedotin in Previously Treated Advanced Urothelial Carcinoma

文献

2021 年 3 月 25 日N Engl J Med 2021; 384:1125-1135 DOI: 10.1056/NEJMoa2035807

記事の種類

ORIGINAL ARTICLE

背景

進行性尿路上皮癌は依然として悪性度が高い。今回の試験においては以前にプラチナ製剤とPD-1またはPD-L1阻害剤による治療を受けた局所進行性または転移性尿路上皮がん患者を対象に、エンホルツマブ ベドチンを化学療法と比較して評価する非盲検第Ⅲ相試験である。

方法

非盲検第Ⅲ相試験

対象患者:608人(19カ国191施設)

18歳以上で尿路上皮がんの診断の患者。パフォーマンスステータススコアは0-1(日常生活は送ることができている程度)で、PD-1、またはPD-L1阻害剤による治療を受けた(あるいは受けている間に)がんの進行または再発がみられた方。

除外基準:グレード2以上の感覚神経障害または運動神経障害、前治療に関連する重大な毒性作用、中枢神経系に転移がある、コントロール不良の糖尿病、活動性の結膜炎や角膜の潰瘍がある患者は除外されている。

研究デザイン

エンホルツマブ ベドチン:化学療法を1:1にランダムで割り当てる。

期間:2018年4月16日~2019年11月29日

治療内容

エンホルツマブ ベドチン投与群:28日を1つのサイクルとして1,8,15日目に体重1kgあたり1.25㎎の用量で投与した。

化学療法群:21日を1つのサイクルとして1日目に投与。

ドセタキセル投与群:体表面積1㎡あたり75mgの用量で投与(前投薬あり)

パクリタキセル投与群:体表面積1㎡あたり175mgの用量で投与(前投薬あり)

ビンフルニン投与群:体表面積1㎡あたり320mgの用量で投与

アウトカム

主要評価項目:全生存期間

副次評価項目:無増悪生存期間、臨床反応

統計分析:カプランマイヤー法、ログランク検定、コックス比例ハザード モデル

結果

・全生存期間について

全生存期間の中央値は、エンホルツマブ ベドチン群で12.88か月(95% CI、10.58~15.21)、化学療法群で8.97か月(95% CI、8.05~10.74)だった。12か月時点で生存している患者の推定割合は、エンホルツマブ ベドチン群で51.5%(95% CI、44.6~58.0)、化学療法群で39.2%(95% CI、32.6~45.6)だった。

・無増悪生存期間について

無増悪生存期間の中央値は、エンホルツマブ ベドチン群で5.55か月(95% CI、5.32~5.82)、化学療法群で3.71か月(95% CI、3.52~3.94)だった。

・臨床反応について

完全または部分奏効を示した患者の奏効期間中央値は、エンホルツマブ ベドチン群で7.39カ月、化学療法群で8.11カ月だった。

・安全性について

治療関連の有害事象の発生率は全体的に高かったが、2つの群で同様であった(エンホルツマブ ベドチン群では93.9%、化学療法群では91.8%)。グレード3以上の治療関連の有害事象は、エンホルツマブ ベドチン群の患者の51.4%、化学療法群の患者の49.8%で発生した。患者の少なくとも5%で発生したグレード3以上の治療関連の有害事象には、エンホルツマブ ベドチン群における斑状丘疹性発疹(7.4%)、疲労(6.4%)、好中球数の減少(6.1%)と好中球数の減少(化学療法群では、13.4%)、貧血(7.6%)、白血球数減少(6.9%)、好中球減少症(6.2%)、発熱性好中球減少症(5.5%)が認められた。

結論

エンフォルツマブ ベドチンは、プラチナベースの化学療法と PD-1 または PD-L1 阻害剤による治療を受けた進行性尿路上皮癌患者において、化学療法よりも優れた有効性を示した。

 

薬剤師Nのコメント

今回は話題の企業の薬剤について調べてみましたが、実際には私たちはもっと簡単に必要な情報を取っています。多くの抗がん剤について、各メーカーより「適正使用ガイド」が発行されており、日本語で重要事項はまとまっています。

適正使用ガイド

ただし、この適正使用ガイドを企業のホームページで閲覧するには医療従事者である必要があり、企業によっては職場も登録するし、どの企業かはおぼえていませんが実際に在籍確認の電話が来たこともあります。

会員登録の必要なサイトです

・信頼できる論文について

査読されている論文を読むことが望ましいですが、とりあえずThe NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEに載っていれば良い研究と思っています(ここに掲載されている論文はまともな査読を受けていると思われます)。

企業のホームページで新薬の承認についてプレスリリースが出ていると、必ず承認の根拠となった治験が出ているので、タイトルをコピペして読んでみましょう。プレスリリースについては医療従事者でなくても閲覧可能です。

 

(ないしょばなし)

勤め先の病院で新薬を採用しようと思った時には、使いたい薬について根拠となる論文の提出が必須です。私一個人としては、試験はなるべく新薬VSプラセボ群ではなく、新薬VS他の標準治療との比較が望ましいです。つまり、本試験はなかなか好ましい条件で行われていると思います。